狂気の末路

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静けさに満ちた部屋。 俺の呼吸と時を刻む秒針の音だけが、やけに大きく聞こえる。 いつだ。 いつ、俺は獣になる。 惨めに生に執着した俺の末路は、ウィルスに侵され人間を襲う、あの狂った獣になるのを待つだけなのか・・・・・・? この、妻だったもののように。 ふと、その噛まれた腕に巻きつけたタオルが目についた。 血液を含み、どす黒く変色した・・・・・・止血の・・・・・・ 止血・・・・・・? ラジオやテレビで繰り返し流されていた、ウィルスに関する数少ない情報が頭をよぎる。 これほどまでに被害が拡大し、感染者が蔓延する前だ。 確か噛まれた場合の処置として、止血してはいけないと・・・・・・そう言ってなかったか? 血液がウィルスを体外に押し出すのだと。 止血はせずに洗い流し、アルコール消毒をしろと。 妻に施した処置は間違っていた。 それが発症の原因となってしまったかはわからない。 だが、正しい処置はウィルスが体に広がるのを遅れさせてくれるかもしれない。 自害する勇気も無いなら、せめて最後まで足掻いていろ! それが今の俺に出来る贖罪だ。
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