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「盗み聞きか?」
「なんとかならないの?」
「なんとかって・・・」
「後悔したまま・・」
「現実は厳しいだろ。主治医と言えどそこまでのプライバシーを」
「先生がプライバシーを侵す必要は無いんじゃない?」
「・・・え?」
「いるでしょ。プライバシー侵せる人」
「・・・お前、言い方考えろよ」
とんでもないことを言うだけ言って綾香はナースステーションに戻った。彼女が言うのはおそらくあいつのことだ。職業としてある程度のプライバシーを侵せるやつが確かにいる。でもあいつに頼むのか・・・と悶々としながら昼食を取りに食堂へ向かうとおなじみの二人がいた。日替わり定食を買い、その二人のテーブルにどかりと腰を下ろした。
「よっ。お暇なのかなお二人さん」
そう声をかけると二人は心底迷惑そうな顔でこっちを見てきた。
「来宮、お前だけには言われたくないね」
数々の女性患者をファンにしてきたにこやかスマイルでそう言ったのは血液内科の神坂葵で。
「暇なら俺の仕事手伝えよ」
俺の投げかけた言葉を聞き間違えているこいつは呼吸器内科の池橋和樹だ。二人とも俺の高校時代からの同期だ。高校3年・大学6年、もう一人を加えて「塩顔4」なんて呼ばれてきた。・・・それはどうでもいい話だった。神坂が話を振ってきた。
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