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「来宮、白野さんどうなの?」
「ああ。まあ、厳しい状況なのは変わらない」
「うん。厳しいね」
「それもだし、違う問題も出てきたから」
「そうなの?」
「まあ。そっちはどうにかするつもりなんだけど・・・」
そうなの、と言って神坂は再び飯を食べ始めた。次は池橋が口を開いた。
「二人は見たの?あのメール」
「ああ」
あのメール。今朝、スタッフのパソコンに一斉送信されていたメールのことだ。
「池橋、お前あれ事実だと思ってるのか?」
「ん?本当だったら面白いよね」
この病院のスタッフとしては、とんでも無いことを言い出す。
「まさか。デマでしょ。」
神坂は持ち前のポジティブ精神でデマと信じているらしい。あのメールの内容、それは。「産婦人科部長は不倫している。」の文章と、その最中の写真。あいにく、女性の顔は写っていなかったが。
「なんで今、出回ったんだろう」
「来宮は本当だと思ってるんだ」
「いや、ていうか」
メールのせいで、既に部長のスタッフからの信頼は地に落ちていた。
「そんなに気になるなら、調べてみれば」
池橋は平然と言う。
「無理だろ。そんな能力も時間もない」
「いるだろ。俺達には頼める奴が」
「ああ。そうだね。坂原に頼めばいいじゃない」
坂原・・・。坂原は先ほど紹介した「塩顔4」のもう一人で。あいつの本職は探偵だ。
「お前ら・・・。坂原って今何してんの?」
「さあな。暇してるんじゃないか?」
だったら。正直俺は部長の不倫より先に頼みたいことがある。彼女には時間が無い。
「ま。不倫なんて結局部長のプライベートだし、俺はそんなに興味ないけど。不倫してても仕事してくれればそれでよくないか?」
池橋が極論の持論を述べる。
「まあねえ。患者さんには関係ないしね。・・・あ、もうこんな時間だ。僕先に行くね。」
神坂はそう言って医局に戻っていった。
「・・血液内科は本当に忙しそうだな」
「部長が吉沢先生で、研修医まで付けられてたらそりゃそうだろうな。とか言ってる俺も今日は忙しいんだった。そろそろ行くわ。あんまり気になるならマジであいつに頼んじゃえよ。」
「簡単に言うなよ。調べてガチだったらどうするんだよ」
「そん時はそん時でしょ。じゃあな」
池橋はひらひらと手を振って去っていた。俺は冷めきった飯をとりあえずかき込んだ。
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