愛惜の日

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** お姉様のお招きに甘えて部屋の中にお邪魔して、白いテーブルセットの藤椅子に腰掛けますと、すぐ芳ばしいコーヒーの香りが部屋中に広がります。 「遠くハワイの地で、同じ日本人が創り上げたハワイコナコーヒーよ。きっとお口にあうと思うの」 白いカップを引き立て役に、誇らしげに湯気を立てる琥珀色の奇跡。それを味わうお姉様もどこか誇らしげです。 私はそれまで、コーヒーを美味しいと思ったことがありませんでした。でもこの一杯をいただいた今、その考えは改めねばと思いました。それほど、お姉様のコーヒーは美味しかったのです。 ひと心地ついた私に、アンドーナツはお好き? とお尋ね下さるお姉様の手には既に真っ白いお皿が載っていて、魅力的な洋菓子が幾つも並んでいました。 あんを包んだ生地を丸くふっくらと揚げたあんドーナツは、もちろん私の大好物にございます。
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