愛惜の日

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「いいわ」 答えられない私に、お姉様が明るく頷く。 「ゆきさんなら、いい。いいえあなたには知っていて欲しい」 思いがけないお言葉に顔を上げますと、お姉様の目がまっすぐに私を見つめていました。 「エリスーーあの子はね、エリスというの。ねぇエリス……あら、寝てしまったの」 お姉様につられてベッドを見やると、萌黄色の毛布にくるまれたひとりの天使がすやすやと浅い寝息を立てていました。 彼女は十四、五歳か、そこらの少女に見えます。 少女は襟元にふんだんにレースをあしらった生成色のジョーゼット・ドレスを身につけていて、薄い唇は夢見るように微笑んでいて。 うつむく睫毛の影の長さに心惹かれます。
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