愛惜の日

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『いいえそんな馬鹿なことがあるものですか、私のエリスが私のエリスが人より劣っているだなんて、そんなことあるはずがない。この子はただ人よりも成長がゆっくりなだけですわ。見ていなさいな、三十になる頃には素晴らしくなるのだから』 それがお母様の口癖になりました。 しだいにお母様は正気を失われましたーーついに哀しみに囚われてしまったのです。 父に連れられ、お見舞いに参った私を見てお母様は言いました。 『エリス! ここにいたの。ああエリス、ちゃんとご挨拶ができるのね。ほらね、ほら、だから言ったじゃありませんか。ああ私のエリス、私のエリス……』 そうして嬉しそうに私を抱きしめるのです。 エリスが跡取りから外されたとき以来、お母様は初めて笑ったそうです。 父は喜びました。それで私は本当の母と引き離されて、本家の跡取りとして育てられることになりました。
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