愛惜の日

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「私は家元の体面などどうでも良いの。だけど、ねえ、ゆきさん。親に存在を消され、万一それがスキャンダルと共に明らかになったとしたら。たとえエリス自身にはそれが分からなくとも、エリスは必ず世間の物笑いになるのよ。私にはそんなこと耐えられない。二度もこの手でエリスを辱しめることなど、私にはできない。それにエリスの存在が白日のもとになったなら、今度こそ父はエリスを害するかもしれない……。明日からはもう二度とここへ来られなくとも、私は」 きっぱりと前を向くお姿の、本当になんて強い。 「守るのよ」 「お姉様」 「今度こそ私がエリスを守るの。そうこれは私の贖罪なのです。断じて悲しみの道ではないの。私が、私自身で選びとった道なのです。そのことをゆきさん。あなただけはどうか、覚えていてちょうだいね……」 最後の声は震えていました。 たまらなくなった私は、茜色に縁取られるお姉様の背中をいっぱいに抱きしめました。 「ゆきさん……」 ああやはりお姉様は素晴らしい人です。素晴らしい人です。素晴らしい……。 「泣いて下さるの? 私などのために。ゆきさん、あなたって真実、優しいのだわ」 いいえ、いいえ違います。  優しいのはお姉様。いつだってお姉様です。 エリス様を愛するお姉様のように、そうきっと私も……。
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