愛惜の日

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私はその場にくずおれました、腰を抜かすのではないかと思いました。でも見上げた窓から、それはそれはマーガレットのようにかあいらしいお嬢さんが顔を出したのです。 私は驚くことも忘れてお嬢さんに見とれました。 肩下までの淡い巻き毛が優しく輪郭を縁取り、長い睫毛は西洋人形のよう。 華奢な肩に浮き出た鎖骨、青白い頬が、彼女のあまり健やかでないお体を伝えている。 けれど表情はどこまでも澄みきっていて、どこにも、苦しみの影さえみえません。 「ゆきさん、ゆきさんなの?」 慣れた声に我を取り戻しますと、ああ窓の端からお姉様が目を真ん丸とさせて私を見ているではありませんか。 どうしましょう。ああこんな時、どうしたらいいの……。
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