愛惜の日

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愛惜の日

私どもの学び舎であるここ音橘女学園は、明治二十年に創立され、大正五年の今年に創立三十年を迎える伝統と格式ある学校です。 ええ、左様でございます。みな様のご想像の通り、それなりのご身分と財をお持ちのお嬢さんでないとここへの進学は難しゅうございます。    それは間接的にも私がこの条件に叶う身の上なのだと自慢しているように受け取られるかもしれません。私がそれは違うと百度否定しようとも、受け取り方は人それぞれですから。気に病んでも、後は仕方がないのです。 私はまだ入学して半年足らずの学生です。 ですが倶楽部活動を通して他学年の先輩方ともお近づきになることができます。 なかでも苦手を克服しようと飛び込んだ華道倶楽部には、(しょう)子様という天才的な方がいらっしゃいます。  華道家元のお生まれは万人が納得の腕前の、生け花は言うに及ばず。季節の野の花を用いてひとりひとりに異なるブローチを拵えて下さった日は、その美しさ愛らしさに息を呑み皆で小さな子供のようにはしゃいだものです。
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