感染詐欺

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 …――俺は生まれついての詐欺師。  特に結婚詐欺が得意でかれこれ合計50回を超える場数を踏んでいる。もちろん今回働く詐欺は結婚詐欺などといった下世話なものではない。尊い命を弄ぶ詐欺である。そのゴールデンな詐欺を感染詐欺とでも名付けておこうか。  繰り返す。  感染詐欺である。  ククク。我ながらなんという天才的なネーミングセンスであろうか。アッハハ。  顎が外れるほどに笑いが止まらんぞ。ククク。  そうだな。  肝心の手口はこうだ。  まず騙す相手が現われたら腹を押えてしゃがみ込む。次に「腹が痛い。悪いバイキンに感染したみたいだ」と訴える。そこで相手が騙されたら「死にそうだから休ませてくれ」と畳み掛ける。最後の仕上げはあれをああするだけだ。  ククク。その仕上げが終われば……、煮るも焼くも俺の自由だ。  フリーダムッ!  おっと馬鹿笑いはこのへんで止めておこう。  騙す相手が来たようだぞ。 「ほらほら、まーくん、朝よ。早く起きなさいな。学校に遅れてもいいの?」  予定通り腹を押えてしゃがみ込む。 「ママ。お腹が痛い。悪いバイキンに感染したみたいだよ」 「本当?」 「うん。死にそうだから休ませてよ」 「熱を測りましょう」  フッ、あとは総仕上げに体温計をこすってあり得ない温度にするだけだ。  ちなみに結婚詐欺というのはママゴトでの話だ。  おっほん。 【 了 】
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