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「良かった。覚えてくれてなかったら、連れていけないとこでした。」
「はい?連れていくって誰を...」
「この星空と満月なら、今の僕でも十分結べる」
「...話が全く分からないんですが」
目の前の男の子は一体何を言ってるのだろう...
可愛い顔してやっぱり不良かなにかだったのだろうか?
私の不安なんて知りませんと言わんばかりの、笑顔を浮かべ私の手を握った。
「婚姻を結ぶんですよ。僕と貴女が。この星空と満月の下で。」
そう言った瞬間、男の子の瞳が黄金色に輝き始める。
婚姻を結ぶって...私が?!
会って数分の、それも中学生くらいの男の子と?
くらりと眩暈がして倒れそうになるが、男の子がしっかりと抱き締めるようにして支えてくれた。
「分かりませんか?僕は蛇ですよ、あの時貴女が助けてくれた。」
私の頬を愛しそうに撫でながら男の子は話を続ける。
「僕はあの時、力尽きて死を覚悟していた。でも貴女が助けてくれた。まさかパンをくれるとは思わなかったけど、それでもその気持ちが言葉が嬉しくて。僕は貴女に、恋に落ちたんです。」
この男の子があの時の蛇.....?
「貴女にもう一度会いたくて、必死に生きた。そして再び満月がきた。力の満ちる今ならば貴女に"花嫁の印"をつけられる。」
「え、ちょっと待って!まだ話が理解しきれてないけど、私は人間よ?!蛇と人間が結ばれるなんて...」
あり得ない、そう言おうとした私を男の子は遮った。
「大丈夫です。この満月と星空の下なら。夜空が力を貸してくれる。」
「力って...でも私のこと知らないでしょ?!それに結婚するならもっと可愛い女の子とした方が...」
「僕は貴女がいい。貴女以外なんて考えられない。貴女が拒んでも、私は貴女を花嫁にします」
黄金色に輝く瞳に見つめられ、まるで魔法にかかったように手足が動かなくなる。
もっと言いたいことはあるのに、言い返したいのに声が出てくれない。
そんな私に満足したのか男の子は優しく微笑む。
「幸せにします、必ず。」
ゆっくりと唇が重なり、その後は目の前が真っ暗になって意識が途切れた。
「さぁ帰りましょう。僕たちの家に。」
この夜空の下、私の世界は大きく変わった。
しかしこのときの私はまだ知らない。
まだ名前も知らないこの男の子の深くて甘い愛に、喜びを感じる日が来ることを。
End
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