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「やっと仕事終わった...疲れたぁー!」
満月が真上に昇った頃、私は自宅への道を歩いていた。
田舎だからかどの家も明かりひとつついていない。
まるで私だけを仲間外れにしたように。
―――♪
携帯の画面に友達の楽しそうな文面が映る。
「皆いいな...楽しそうで。」
毎日残業で、上司には怒られて。
周りはこんなに楽しそうなのに、どうして私だけ...
堪えていたものが溢れだそうとしたその時だった。
「シュー」
何処からか聞こえてくる変な音。
「何この音?空気漏れ?」
「シュー」
音を辿っていくと、草花の影に蛇が一匹隠れていた。
「何だ蛇か。疲れてるときに出てこないでよね...ってあれ?」
引き返そうとしたが、どこか様子がおかしい。
よく見れば至る所に傷があった。大小様々だが、何かに襲われたのは確かだ。
「お前、何にやられたの?さすがに手当てはしてあげれないけど....」
確か余ったパンがあったはず。
きっと蛇にパンなんてあげたら駄目なんだろうけど、傷だらけの姿が今の自分と重なりどうしても何かしてあげたくなった。
出来るだけ小さく千切ると、蛇の前にそっと置く。
「ごめんね、食べたくないかもだけどもし良ければどうぞ。...痛くて苦しいと思うけど、頑張って生きて。長生きしてよ?」
「.......」
きょとんとした蛇にエールを送り、その場を立ち去る。
どうかもう誰にも襲われませんように。
落ち込んでいた事は忘れ、夜空にただ蛇の無事を祈った。
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