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ここを無事に出れたとして。何処へ逃げるべきかしら?」
「隣国アッシュベルは如何でしょう? 破談になったとはいえ、第二皇子ユーリ様は姫様の元婚約者。匿っていただけるのでは」
「ユーリ様・・・・・・どうかしら。こちらから一方的に破談にしてしまったし、それに、一度しかお目にかかっていないのですもの。流石に無理じゃないかしら」
以前、婚約が決まる前に一度だけお会いしたことのあるユーリ殿下を思い浮かべる。
淡い白銀の髪と鮮やかな碧の瞳が印象的な、貴公子という言葉がぴったりな方だった。
「ですが、姫様。他にと申されても、姉君の嫁がれたガディス公国はいささか距離がありますし・・・・・・」
「そう、ね」
確かに、私が持つ他国との伝手はその二人だけで、ガディス公国は遠すぎる。それに、ユーリ様なら私に利用価値を見出して匿ってくれるかも知れない・・・・・・。
どっちを選んでも問題はおおいけど・・・・・・まだ、この国と仲の良いアッシュベルの方がいいかしら。
「仕方ないわね。とりあえずはその方向で考えましょう」
「では、資金は念の為にと御用意されていた宝石と装身具で・・・・・・」
「そうね、後は・・・・・・」
ちゃくちゃくと逃亡計画は進む。主にリーシャのおかげで。
私だって表向きはアランに従順にして、油断を誘っているしね。
そして、とうとう決行の夜が来た。
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