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アランにとって、なによりも大切なのは姉、リーズシェランだった。
虐められていた時、この姉だけはこっそりと助けてくれていた。
いや、もし助けてもらえなかったとしても、気に掛けてくれただけで、冷たい目や蔑む言葉を向けてこないだけで、幼いアランにとっては゛味方″だった。
彼は幼い頃から利発で、自分達の置かれた立場を理解していた。
母が悪いわけじゃない。それはわかっているけど、苦しい。
父を恨めばいいのか、兄弟達を憎んだらいいのか、ひたすら耐える日々。
ある時、母が死んだ。
殺されたのだ。
明確な悪意を持って投げつけられた石が頭に当たり、そのままーー。
たった一人になった彼をかばってくれたのは、リーズシェランだけだった。
まだ彼女も幼かったというのに、自分より一回りも年上の兄や姉にも屈しなかった。
「姉の私が弟をかばって何が悪いの!」
ガクガクと震えながらリーズシェランが言い放ったその言葉が、どれだけアランの救いになっただろう。
ーーねえさま。ねえ様。姉様。
僕の、僕だけの貴女。貴女だけが僕の救い。
ずっと一緒にいて。ずっとずっと。
それだけでいいから。
それだけでしあわせだから。
・・・・・・なのに、どうして。
どうしてどこかに行こうとするの。
ねえ、姉様・・・・・・
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