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夜の闇を味方に馬を走らせる。
私の名前はリーズシェラン。とある国の王女で、国外逃亡を企てているまっ最中だ。
幸いにも城からの脱出はすんなりと上手くいった。後は城下町を出て、一路隣国アッシュベルを目指すだけである。
「姫、大丈夫ですか?」
私を乗せて馬を走らせているレナードが気遣ってくれる。乗馬は出来るけど、今は一刻を争う事態だからね、リーシャの勧めに従ってレナードの馬に乗せてもらっている。
ちなみに、そのリーシャはというと、メイド服のまま颯爽と馬を駆っている。
騎士達の中でも屈指の腕前と言われていたレナードの乗馬についてこれるリーシャって、本当に何者なの・・・・・・。
もっとしっかり身元を確認するべきだった、と頭の片隅で考えながらも、私は背後のレナードに感謝を伝える。
「ありがとう、大丈夫よ。それにしても運がいいわよね。こんなにすんなりいけるなんて」
「・・・・・・いえ、妙です」
「え?」
「あの陛下にしてはーー警備が、温すぎます」
レナードの言葉に、反論出来なかった。
それは私も漠然と感じていた不安だったから。
ーーそれでも、もう止まることは出来ない。
私とレナードはそれきり口を閉ざし、迫る何かを振り切るように馬を走らせた。
「姫様、あちらに馬車を用意しております」
人気のない小路で馬から降りた私を、リーシャが先導する。
逃亡用の馬車は暗がりにひっそりと置かれていて、なんだか不安になる。
・・・・・・駄目だ、弱気になっちゃ。
私が自分に活を入れていると、レナードが突然立ち止まった。
「姫、お待ち下さい! ここはーー見張られています!」
私が足を止めてすぐに、あちこちの影から黒ずくめの男達が出てくる。驚く暇もなく、あっという間に私達は囲まれてしまった。
レナードとリーシャが前に出て私を庇う。
そんな中、馬車の扉がゆっくりと開き、誰かが降りてきた。
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