対決

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「ねえ、アラン。この二人は許してあげて。私の頼みを聞いてくれただけなの」  レナードが何かを言おうとしたが、目配せで止める。  アランは、ふうん、と呟いた。 「姉様の頼み、ね。つまり姉様はアッシュベルに行きたいんだ。ーーなんで?」  うっ、まさか「あんたがヤンデレで怖いし、国の将来が心配だから」とは言えない。  ・・・・・・言えない、けど。ああ、でも。  ・・・・・・もういい加減、頭に血が上ってきた。 「・・・・・・だって、アラン。私だって自由に外に出たいわ。それに結婚だってしてみたいし。だいたい、レナード達を私に黙って離したり、見張りをつけたり・・・・・・王位に就いたからって、勝手にしすぎじゃない!?」  ヤンデレ監禁ルートは恐いけど、どうせもう詰んでるし、言いたいこと言っちゃえ!  と、ぶちまけるとなんだか涙が出てきた。 「姉様、泣いて・・・・・・」 「いい。放っておいて」  伸ばされた手を振り払い、手の甲で涙をごしごし拭う。王女らしくないのはわかってる。  しばらくの沈黙。  ややして、アランがぽつりと呟いた。 「姉様に、僕はいらないんだね」  え・・・・・・。  私が顔を上げると、アランは今までにないほど優しく微笑んでいた。 「行っていいよ、姉様」 「え」 「今だけは、見逃してあげる」  アランが道を空けると、黒ずくめの男の一人が馬を連れてきた。これに乗って行け、ということなんだろうか。でも・・・・・・。 「ついでに、その女も見逃してあげるよ」  アランの言葉に、リーシャが解放される。リーシャはすぐさま馬上の人になり、私に手を差し出した。 「姫様、さあ。お手を」 「ええ・・・・・・」  私は躊躇いながら手を伸ばしーー。  ーー馬のお尻を思いっ切り引っぱたいた。  ヒヒィン、と嘶きをあげ走り出す馬を見送っていると、レナードが戸惑った声をあげた。 「・・・・・・姫、よろしいのですか?」 「うん。いいの」  迷いを振り払うようにうなずくと、私は踵を返した。  そして、私をじっと見つめている弟の所へと向かう。
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