9人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねえ、アラン。この二人は許してあげて。私の頼みを聞いてくれただけなの」
レナードが何かを言おうとしたが、目配せで止める。
アランは、ふうん、と呟いた。
「姉様の頼み、ね。つまり姉様はアッシュベルに行きたいんだ。ーーなんで?」
うっ、まさか「あんたがヤンデレで怖いし、国の将来が心配だから」とは言えない。
・・・・・・言えない、けど。ああ、でも。
・・・・・・もういい加減、頭に血が上ってきた。
「・・・・・・だって、アラン。私だって自由に外に出たいわ。それに結婚だってしてみたいし。だいたい、レナード達を私に黙って離したり、見張りをつけたり・・・・・・王位に就いたからって、勝手にしすぎじゃない!?」
ヤンデレ監禁ルートは恐いけど、どうせもう詰んでるし、言いたいこと言っちゃえ!
と、ぶちまけるとなんだか涙が出てきた。
「姉様、泣いて・・・・・・」
「いい。放っておいて」
伸ばされた手を振り払い、手の甲で涙をごしごし拭う。王女らしくないのはわかってる。
しばらくの沈黙。
ややして、アランがぽつりと呟いた。
「姉様に、僕はいらないんだね」
え・・・・・・。
私が顔を上げると、アランは今までにないほど優しく微笑んでいた。
「行っていいよ、姉様」
「え」
「今だけは、見逃してあげる」
アランが道を空けると、黒ずくめの男の一人が馬を連れてきた。これに乗って行け、ということなんだろうか。でも・・・・・・。
「ついでに、その女も見逃してあげるよ」
アランの言葉に、リーシャが解放される。リーシャはすぐさま馬上の人になり、私に手を差し出した。
「姫様、さあ。お手を」
「ええ・・・・・・」
私は躊躇いながら手を伸ばしーー。
ーー馬のお尻を思いっ切り引っぱたいた。
ヒヒィン、と嘶きをあげ走り出す馬を見送っていると、レナードが戸惑った声をあげた。
「・・・・・・姫、よろしいのですか?」
「うん。いいの」
迷いを振り払うようにうなずくと、私は踵を返した。
そして、私をじっと見つめている弟の所へと向かう。
最初のコメントを投稿しよう!