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アランは迷子の子供のように途方に暮れた目をしていた。
「・・・・・・いいの。行かなくて」
「うん」
「もうこんなチャンスはあげないよ?」
「うん、いいわよ」
「・・・・・・姉様」
「ねえ、アラン。私、やっぱり結婚はしてみたいし、もう少しは自由が欲しいわ」
「・・・・・・」
「レナード達も傍に居てくれたら嬉しいし」
「・・・・・・わがままだね」
アランの声は震えている。私は笑ってーーそんな、子供みたいにどうしようもない弟を抱き締めた。
「ええ。わがままなの。でも、叶えてちょうだい。そのかわり」
ーーずっと傍に居るから。
泣き虫だった頃のアランが、今は少しだけ顔を出したようだ。
声を押し殺して泣くアランの背を撫でてあげながら、私は苦笑する。
やっぱり見捨てられなかった。だって、弟なのだ。ヤンデレだろうが王だろうが、可愛い弟に違いは無い。
・・・・・・だから、いいのだ。
ーーこうして私は再び王城に戻った。
その後、レナードが元の護衛に戻ってきたり、見張りの数が減ったりと、ちょっとだけ変化はあった。
リーシャがどうなったのかはわからない。あの場では、ああして逃がしてあげるだけで精一杯だったし。
もしかしたら・・・・・・の仲かもしれないレナードには悪いけど、仕方ないわよね。
ーーその後。私に婿入りの話が来て、それが元婚約者のユーリ皇子だったり、その侍女の一人がリーシャだったりするのだけれど、それはまた、別のお話。
「姉様、どうかしましたか?」
「ううん、なんでもないわ」
今日も私はヤンデレな弟の隣で微笑んでいる。
・・・・・・正妃だけはなんとか選ばせないと、と頭を悩ませながら。
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