13人が本棚に入れています
本棚に追加
静かに言った彼の顔は、微笑んでいるのだが、
すごく複雑な物を浮かべて歪んで見える。
その様子に、なんとなく私の答えに察しがついているのだろうと思えた。
だから私も彼の方へと足を進め、数歩を間に立ち止まった。
「あの、福澤さん。先日のお話ですけど、私、やっぱり……」
「あの先輩が、好き?」
言い掛けた私の言葉尻に、彼の言葉が挟み込む。
だが私は、頷くこともかぶりを振ることもせず、真っ直ぐ彼を見返した。
「あの、こんな私を福澤さんが好きになってくださったのは、
すごく、ありがたいと思うんです。でも私は、やっぱり……」
「彼の方が、好き?」
再び、同じ事を尋ねられた。
だが私は、今度も彼を真っ直ぐに見ていた。
最初のコメントを投稿しよう!