その後編1 「カップル事情」

4/28
前へ
/38ページ
次へ
静かに言った彼の顔は、微笑んでいるのだが、 すごく複雑な物を浮かべて歪んで見える。 その様子に、なんとなく私の答えに察しがついているのだろうと思えた。 だから私も彼の方へと足を進め、数歩を間に立ち止まった。 「あの、福澤さん。先日のお話ですけど、私、やっぱり……」 「あの先輩が、好き?」 言い掛けた私の言葉尻に、彼の言葉が挟み込む。 だが私は、頷くこともかぶりを振ることもせず、真っ直ぐ彼を見返した。 「あの、こんな私を福澤さんが好きになってくださったのは、 すごく、ありがたいと思うんです。でも私は、やっぱり……」 「彼の方が、好き?」 再び、同じ事を尋ねられた。 だが私は、今度も彼を真っ直ぐに見ていた。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加