12 サクラ 花びら 恋の舞(つづき)

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「あんまり変わってねぇな」 その私の横で、先輩の声が独り言のように呟いた。 そして、それに「そうですね」と頷くと、「あの頃さ」と彼の静かな声が続いた。 「この道を(かよ)ってた頃は、自分じゃ大人の端くれくらいに思ってた。 でも、やっぱりガキだったんだよな」 ゆっくりと切り出した彼は、あの頃の自分を振り返るように話しだす。 「前にも話したかもしれねぇけど、親父と孝枝さんが出会ったのは、 俺が高校に入る直前でさ。 恐らく最初の半年くらいは、単なる上司と部下。 まぁ、お袋に先立たれた親父に 彼女が、少し同情してたくらいだったんだろうと思うんだ。 それが、彼女はもちろん、親父の中でも 互いが特別な存在になってるって気付いたのが、高校1年の終わり頃」
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