13人が本棚に入れています
本棚に追加
頭では、父親が誰かを好きになってもおかしくないと、分かってはいた。
だが、やはり気持ちの上では、母以外の女性に惹かれる父に
ある種の嫌悪を抱いていたという。
「けど、あれ位の年頃じゃ、本音と建て前を分けて振る舞うほど
成長できてねぇんだよな。
だから、ついイラつく気持ちが表に出ちまう」
しかし、それが八つ当たりだということは理解できていた。
だから彼は、いつしかそんな自分の態度を
カモフラージュするようになっていったらしい。
「けど、最初はそれが上手く出来なくてさ。
わざとらしくなったり、苛立ちが先に立ったりな。
そんな俺に、いち早く気付いたのが、当時クラスも部活も一緒だった山中。
で、それからはアイツが色んな場面で、さり気なくフォローをしてくれてな」
山中先輩は、特に事情を聞いてくるようなことはしなかったという。
だが結局、川澄先輩のほうから、
やや持て余していた気持ちを吐露する形で、全てを山中先輩に話した。
そして、それから彼らの間には、あの不思議な距離感が出来ていったらしい。
最初のコメントを投稿しよう!