12 サクラ 花びら 恋の舞(つづき)

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部活動は日暮れ前に終わる規則なため、すでに門の向こうに人の姿はなかった。 だが、何かと行事が目白押しの時季だからか。 職員室には、灯りが点いている。 それでも、人声がする訳でも人通りがある訳でもない辺りは シンと静まり返っていた。 そして、そんな正門前までくると先輩は、 私を(いざな)うように、門の脇にそびえるように植わる桜の大樹の下に連れて行った。 「お前さ、入学式の当日。夕方に、この木の下でコイツを見上げてただろ?」 へっ?  思い切り驚いた。 それというのも、確かに先輩の言っていた事は事実。 中学2年の春に、この学校の制服に憧れ、 咲き誇っているこの桜の下を必ずくぐろうと、 少し背伸びをして勉強をがんばった。 だから、念願の制服に身を包み、午後の入学式を終えて 少しだけ校内を見て回り、散り始めた桜を見上げていた私の胸は 希望でいっぱいだった。
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