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だが、まだ部活動も始まらない、始業式と入学式の日。
しかも、生徒たちが帰宅した夕方のことで、
まさか、そんな自分を誰かに見られているなど思いも寄らなかった。
だから、自然と疑問が口を突いてくる。
「どうして、それを……?」
すると先輩は、隣から、すごく優しい眼差しを向けて微笑んだ。
「あの日、俺、友達から借りたマンガを教室に忘れてきててさ。
でも、翌日からは授業も部活も始まるから、どうしてもその日に読みたくてな。
一度、家に帰ったにも関わらず、諦めきれずに学校に取りに戻ったんだよ。
それで、門を出ようとしたら、お前がこの木の下に立ってた」
ヒラヒラと桜が舞い散る中、
何を思うのか、私は、わずかに微笑んで木を見上げていたという。
そして彼は、そんな私に、ひと目惚れをしたらしい。
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