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「正直さ、その時は、あんまりにもドキドキし過ぎて
その場から、しばらく動けなかった。
だから、そんなお前が同じ部に入部してきた日は、
『奇跡だ』とか思って眠れなくてな。
それが、俺が、お前に惚れたいきさつ」
そして、「それとな」と続けた彼は、
夜の中に枝を伸ばす大樹へと、ゆっくり視線を向けた。
「俺らの卒業式の日。実は、俺が、お前に告ろうと思ってたんだ」
「えっ?」
再びの予想を超える発言に本当に驚き、思わず声が詰まった。
だが、その視界の中で、彼の横顔がゆっくりと微笑む。
「お前が山中に惚れてたのも知ってたし、
俺は、なんとなく避けられてるのも分かってた。
だけどあの日を逃したら、俺は一生、お前に会えなくなると思ってたからな。
今から考えたら、言い逃げみたいなもんだが、
それでも気持ちは伝えようって、朝までは強く決心してたんだぜ?」
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