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しかし、私が山中先輩に手紙を送った姿を陰から見てしまい、
その場から動けなくなったという。
「お前、手はもちろん、声まで震えてるのに、
アイツへの言葉はしっかりしててさ。
あぁ、コイツの気持ちはアイツしか見えてねぇな。
玉砕覚悟でも、俺が告るのなんか単なる自己満なんだなって
つくづく思えてさ」
先輩……。
思わず呟いた私に、先輩の眼差しがゆっくりと戻ってきた。
そして、そっと引き寄せられて抱きしめられる。
「だから今の俺は、すごく幸せだよ。
ちょっと自棄になるほどヘコんで、逃げるように九州に向かったあの頃の俺に、
数年後には想いは実るから、胸張って行けって言いたいくらいにな」
そして、少しだけ腕を緩めて、再び腕の中の私を見詰めた。
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