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僕が引っ越す少し前に、公務員住宅内で運動会が開かれた。
僕はパン食い競争に参加した。
同じレースに千夏ちゃんも出ていた。
僕はこのレースで1等になったが、ゴールした後、
千夏ちゃんが僕をみながらきゃっきゃっと大笑いしていた。
僕のパンに食らいつく姿がおかしかったのだろうか。
いまだにあの笑いが何だったのかわからない。
だが笑われていたはずなのに、恥ずかしい気はしない。
むしろ忘れたくない良い思い出に思える。
最後の日のことも覚えている。
見送りしてくれる友人たちに手を振りながら、
僕は母に連れられて、徒歩で公務員住宅を出た。
何ともあっけないとお別れだと思った。
駅へ向かう途中で母と弟と3人でラーメンを食べた気がする。
ラーメンを食べてからさらに歩いて、新小平駅へ着き、
そこから電車に乗って小平市を離れた。
その日から十数年、僕は小平市を訪れなかった。
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