記憶のコラージュ

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僕が住んでいた住宅の西に商店街があった。 雑多な感じで、多種多様な商店が並んでいた。 ここに「テキサス」というステーキハウスがあった。 僕と弟は月に一度、父に散髪に連れて行かれ、 その帰りにここでステーキを食べるのが習慣だった。 他にも初めてファミコンを買ったおもちゃ屋や ビックリマンチョコを探しまわった商店などがあった。 馴染みだった店はもうあらかた潰れている。 僕がいた頃の記憶といまでも一致するのは道路くらいだ。 僕が住んでいた住宅のずっと西へ行ったところに、中央公民館があった。 休日に父に連れられてよくここの温水プールで遊んだ。 それ以外のことはあまりよく覚えていない。 我が家ではときどき遠くへ買い物に行くことがあった。 遠くと言っても、バスに乗って武蔵小金井駅前の西友と長崎屋に行く程度の遠出だ。 だが小学生の僕にとってはかなり遠くへ買い物、という気分になった。 西友や長崎屋で何を買ったのかは覚えていない。 近所のスーパーでは変えない洋服などの雑貨品を買っていたのだろうか。 僕にはあまり興味のないことだった。 僕がこの遠出で関心をもっていたのはレストランでの食事だった。 長崎屋の最上階に「オアシス」というレストランがあり、 そこでホットケーキを食べるのを楽しみにしていた。 長崎屋は当時の僕の活動範囲内で最も高い建物だったので、 オアシスから眺める外の景色は他では見られない勇壮なものに思えた。 今でも西友は残っているが、長崎屋とオアシスはなくなっている。
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