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「・・紀元前三三四年、マケドニアのフィリッポス二世の跡を継いだアレクサンドロス王は、ペルシャの東方へ向かって遠征を開始した。行く手を阻む敵国への数々の勝利によってマケドニアの版図は拡がり、それはインダス川の西側まで及んだ。アレクサンドロス王は遠征先で没したが、その版図内への交易が深まり、アレクサンドロス王の信奉していたギリシャの文化もまた東へ、オリエントへと拡がっていったのである。その流れはシルクロードや海路を通じ、遠くこの日本にまで影響を及ぼすこととなった」
知絵がヘレニズムに関する一章を読み終えると交代の指示が入った。次の生徒が続きを読み始める。
そのまま授業は進んで行った。だがそれにしても淡々としていて、なにか変化に乏しい。
(この授業は何だ?重苦しい)
瞬一(しゅんいち)は苦笑いをした。
今、世界史の授業であるのは間違いない。だが、この教師の顔はそもそも見たことがない。いつもであれば四十歳前後の男の教師がやって来て、得意の冗談を飛ばしているはずだ。瞬一より前方に座る知絵とその隣に座る香奈美の顔を見ても、どこか怪訝な表情が浮かんでいる。
「先生」
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