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生徒からの反応はない。
「年齢は秘密としておく。これこの通り、君たちより若干長く生きておる。年寄りであるから多少のご不便をかけるであろう。ご容赦下され。このたびの交替については学年主任、教頭である美寿々先生が取り計らっておられる。この度の事情もよく御存知のはず。もし何か気になる向きでもあれば、そちらへ尋ねてみても良かろう。美寿々先生であれば諸君らとそれほど年齢もかけ離れておらん。声もかけやすいはず。どうじゃ、これでも気を遣っておる」
その教師は男子生徒の多いほうへ顔を向けて言った。
「では、美里乃台(みりのだい)高校、二年B組の諸君。本日の授業はここまでとする。気をつけ!」
久保田先生は自分で号令をかけると直立の姿勢をとった。そのまま生徒に一礼し、出口のある廊下とは逆の窓際の方向へ歩いて行く。
その窓から見えるのは裏山である。樹木の茂みとその間から平坦になった広場のような風景が見え隠れしている。久保田先生は窓ガラスを開けた。すると新鮮な空気が教室へ流れ込む。
「これが春千乃(はるちの)の丘じゃよ。よく見えるのう」
そう言うと久保田先生は生徒のほうへ振り返った。
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