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窓が開けっ放しとなっている。久保田先生が教室を出て行った後に誰も窓を閉めに行かないのだ。瞬一は自分の教科書を開いたままにしていた。
「それ、あたしのじゃないの?」
前方に座る知絵が振り返っていた。すぐ後ろは宇附鍬広(うつけすきひろ)の席である。
宇附の机の上に化粧ポーチが置かれていた。どうも知絵のものらしい。ガラスの小瓶がその周りに散らばっている。
「おい、瞬一。どうだ、このセンスの良さは?」
瞬一のほうを向いて振り返ったのは宇附だった。
両手の指先を上に伸ばし、胸のあたりに手の甲を向けてこちらに見せている。どれも脂を塗り重ねたようにテカりを放って見えるのは爪にネイルを塗っているせいだ。光の粒子が輝いているように見えるのはラメが混じっているからなのだろう。
宇附の斜め向こうの席では、川野辺裕祐(かわのべゆうすけ)がストローに口をあて、パック牛乳の中身を吸い込んでいた。その右隣にいるのが知絵だ。そのまた右にいるのは香奈美である。
首の周りが十分日焼けをした五分刈り頭の川野辺裕祐は、マンガを肘で押さえたまま、菓子パンの袋を破ろうとしていた。
「ちょっと宇附!」
知絵が叫んだ。「ヒトのモノ、勝手に使わないでくれる?」
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