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階段で五階まで登り、鍵を開けて部屋に入る。寮の部屋は小ぢんまりとしているが、内装、外装ともに綺麗だ。各個ユニットバスを完備しているというビジネスホテル並みの設備にも関わらず、エレベーターがないのはどうかと思うが、しかしこれだけ上等の、それも相部屋ではなくそれぞれに個室が用意されているという点に関しては感嘆が漏れる。まあ、この学校の生徒を相部屋にすると最悪な事態が起こりかねないという考えもあるだろうが、同時に、社会から爪弾かれた存在に対して配慮するほどの予算が国にあるのだろうかと疑問にも感じる。
俺は荷物を置くと、着替えもせずにベッドに転がって、大きく息を吐き出した。
――――黒羽みさき、四葉すず。ふと、彼女らの顔が脳裏に浮かぶ。
どちらも同じクラスの女子だった。生徒会は俺を含めて十人にも満たないため、同じクラスの人間が観察対象になる確率は少ないらしいが、俺は前回に引き続いて同じクラスの人間が監視対象となった。正直なところ、一緒の空気を吸っている奴が監視対象となる――つまり、死に近い――と云われるのは居心地が悪かった。ある程度近しい存在だけに、失った時に心が痛むのは、前監視対象である林原めぐみの件でよくわかっていた。
二人とは挨拶を交わしたことはあるが、腰を据えて会話をしたことはなく、二人がどんな性格なのかは判然としない。もちろん、なぜ「死に近い」と判断されたのか、もだ。学園側は「この人を観察してください」と一方的に依頼を送り、報告書の提出を義務付けてくるものの、対象者の情報なんかは一切教えてくれない。プライベートな情報を垂れ流すわけにはいかないのも理解できるが、人の生死が掛かった事柄をすべて生徒任せというのには腹が立つ。
しかし苛立ちを募らせたところで必要な情報は入ってこないし、何も情報が無いのでは報告書の提出も務まらないので、俺たち自らが探りを入れる必要があるわけだ。
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