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寮を出て空を仰ぐと、夕焼けが空の半分を占めていた。寮を出て、学校の塀沿いに歩き、案内板に従って舗装された分かれ道を進むと、すぐに共同墓地にたどり着いた。
公園みたいにひらけた場所で、清潔感があり、手入れされた芝が茂っていた。墓地、と形容するよりも公園と例えた方が近いのかもしれない。入り口の石造りのアーチから、中央までまっすぐに石畳の道が伸びており、広場の中央には大きな石碑がある。あれが共同墓地だ。
アーチを潜り抜けたところで、「ん?」と真藤がうなった。
「先客がいるな、おい、早馬。先客だぞ」強い力でばしばしと肩を叩いてくる。
「言われなくても分かってるよ」と俺は呆れつつ、石碑の方へと視線をやった。
二つの人影が見え、途端に心臓が高鳴った。後ろ姿だったが間違いない。制服姿の女生徒の正体は、今日、俺の監視対象となった二人――――黒羽みさきと四葉すずだった。
「おっと、あれって、黒羽と四葉じゃねーか? おぉーい」
ここが形式上ながら墓地であることや、静謐な場所であることを歯牙にも掛けない真藤は、大きな声で手を振りながら、はばかることなく二人のいる石碑へと近寄った。俺の方は、少し動揺してしまったせいで落ち着かない気分だったが、平静を装って真藤の後ろに続いた。
俺たちが歩み寄ると、ひとりが金髪をなびかせて振り返る。
「ほあっ? あー、真藤と……えと、晴馬くん、だっけ?」
振り返ってそう言ったのは、四葉すずだった。艶のある鮮やかな金髪をさらさらと靡かせて目を細めている。
「なに言ってんだ。こいつは晴馬じゃなくて早馬だっつーの」
俺が訂正するより先に真藤が言う。「クラスメイトの名前間違えるとか、四葉ってほんと頭わりーのな」
哄笑して腹を抱える真藤を憎々しげに睨みながら、四葉はびしりと指をさす。
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