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「仕方がないよ。僕も、そして早馬君、君も。この学校に在籍している以上、『ふつう』ではないのだからね。それは君も重々理解しているだろうに」
「俺は……っ!」腹立たしげにきっぱり告げた。「俺はただ、姉貴を救うためにここにいるんです……そのためだけに、こうして生きている……」
「僕も似たようなものさ」
そう言い放った生徒会長の双眸のするどさに、俺は思わず気圧されて言葉が出なかった。
学園側が「死に近い」と判断した『監視対象者』を観察し、死から遠ざける――――それが俺たち生徒会の役割だった。この学校に、社会不適応者とみなされた人間ばかりが集まっているのと同じように、生徒会には、学校側に弱みを握られたり恩を受けている人間、つまり裏切らない生徒が選ばれている。表向きは学校の秩序の向上と維持を任されているが、実際にやっていることは、監視対象者を監視してその動向を報告するという趣味の悪いものだ。
「普通なら一端のしがない高校生だったであろう僕も、奇妙なご縁があって、生徒会にいる」
会長は語るような声音で言った。「他の生徒会員も同じだよ、早馬君。口外したくない理由があって学校の言いなりになっているのは君も一緒だろう?」
「……そうですね」俺は悔しながらに返事した。
「協和学園――――この学校は異常だ。中高一貫の学園を中心にして、小さな町が形成されている。こんな四方を山稜に囲まれた僻地に、だよ? 普通じゃあり得ない。精神に異常をきたした人が増えすぎたあまり、国が慌ててとった対策がこれだ。山奥に無理やり詰め込んで、社会に適応できるように矯正させる、じつに短絡的だと思うけどね。でも、この場所は、世界中が非難の目を向けようとも確かに必要なんだ。全学校に適正テストを義務付けて、社会不適応とみなされた者は、地元から引きはがされて強制的に本校に送られる。普通の学校では生きづらいと感じた志望者も、全員入学させている。つまり、ここは最底辺の集まりなんだけれども、僕らみたいな脆弱な人間にとって、唯一の救いの場でもあるのだよ」
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