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日本では非常に多くの人が自らの意思で自らの命を絶っている。およそ三万人とも公表されているが、一説によると、十万人をも超えるという指摘さえある。 そこには本人にしかわかりえない、さまざまな事情・葛藤があるのだろう。自らの手で人生を終える、または終えようとするのを、真臼は考えたことすらない。不遇だった学生時代でさえ、そんなことは過ぎりもしなかった。その境地に立ったことがない以上、他人の覚悟に首を突っ込むことはできない。もしかしたら、自分は恵まれていた方なのではないかとさえ思う。 死を自ら選ばざるをえない状況に追い込まれて「たいまつバンク」にやってきた人たちに対して、一様に真臼自身も気の毒には思っていた。
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