たいまつバンク

Ⅰ

今では、中学生や高校生の提供者も増えている。このことについても「たいまつバンク」開設前、未成年者を対象とするかどうかで議論が紛糾した。結論から言うと、年齢制限は設けられていない。昔と比べて「自己責任論」が台頭し、市民権を得た今、子どもといえ、親や保護者の承認なしでも命を提供できる。これまで散々、その是非が問われてきた少年法の廃止に併せて決定されたことだ。真臼には、中学三年生の娘がひとりいるため、さすがに同じような年頃の子どもがやって来ると胸が痛かった。

「まったく親は何してんだ」

こんな小言が思わず口から出るが、怒りはできるだけかみ殺し、その感情を長引かせることはしなかった。「あくまで単なるルーティンワークなのだから」と自分に言い聞かせて。