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ショーケースには、いかにも高そうな万年筆がずらりと並んでいる。中には驚くような価格のものもあって、加奈子は気まずそうな素振りを見せていた。 「おとうさん、こんなに高い万年筆じゃなくていいよ。そもそも万年筆を今まで使ったことないし」 遠慮がちに言う加奈子に対し、真臼は笑顔で、しかし、堂々とこう言った。 「何を言ってるんだ。最初のうちから一流のものに触れておかないと。じゃないと、本物の良さがわからないしな。それに、一流の大人になるには、若いうちから一流のものを持っておかないと駄目なんだ」 「ねぇ?」と真臼が女性の店員に話を振ると「左様でございますよ」と彼女は満面の笑みで同調した。「これは売れる」と確信したに違いない。
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