プロローグ

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初老の男性は、死んだ男に向かって手を合わせ、こうつぶやいた。 「貴重な御命をご提供いただき、誠にありがとうございます。あなた様に代わって、どなたかがしっかりと人生を全うされることでしょう。合掌」   こんな妙な挨拶がマニュアル化されている「ここ」は、いらなくなった命を預かり、生きたいという願いも虚しく死んでしまった人間に吹き込む「独立行政法人生命リサイクルセンター」。 通称「たいまつバンク」。 燃えさかる命を「たいまつ」に見立て、いつからか、そんな呼び名が定着した。実際の「たいまつ」と異なるのは、一方の炎は完全に消えて無くなってしまうこと。そして、一度は消えたはずの「たいまつ」が、再び燃えさかることだ。
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