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週末、真臼は娘の加奈子と一緒に銀座にいた。あの日、つまり、加奈子の誕生日に上司と飲みに出かけたため、その埋め合わせだ。 加奈子が「万年筆が欲しい」と言ったので、銀座通りから南に一本下ったところにある老舗の文具専門店にやって来た。ここは地下一階から七階まで、ビル一棟がまるごと文房具店になっている。老舗らしからぬ洗練された外観が印象的で、内装にも高級感が溢れている。フロアごとに商品が分かれていて、万年筆は一階と二階。一階の商品がリーズナブルな価格帯であることに比べて、二階には高級万年筆ばかり。 真臼は加奈子を連れて、迷わず二階に上がった。落ち着いた雰囲気の女性店員が上品な笑顔で迎えてくれた。
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