フェア

4

　それは……、それは結城に好きだと言われたってことか？　話がとんでもない方向に行ってる。けど、それよりも。
　こんな状況になっても、雪会さんはけがれないのか。
　俺には理解できない相手の事を、雪会さんは自分の事のように思いやっている。
　普通好意を持たれるはずのない人間に告白されて、抵抗を感じないのか？
　下らない噂を流されて、そういう状況に陥れた本人に恨み辛みを持たないのか？

　ーーなんて心が、白いんだろう。

　俺は雪会さんの名誉が酷く傷付けられた気分でいたが、雪会さんの中では傷付いたのは結城の名誉だけ。傷付けているのは、けがれた目でものを見る、俺達周りの人間だ。雪会さんを困らせてるのは、俺達だ。雪会さんは純粋だ。
　彼女にかかれば、禁忌も普通の風景になってしまうのか。

　いつの間にか焦りと、結城に対する嫌悪感が消え去っていた。
「ごめん、雪会さん」
　どこか穏やかな気分で、思わず俺は、雪会さんに詫びていた。
「結城に告られたの？　雪会さん、断ったのか？」
「ううん、びっくりして、何て言えばいいかわからなかったの。どうしよう」
　仕方ないな。
「なら俺が言ってきてやるよ。雪会さん一人で行ったら、また変な噂になるかも知んないし」