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 可愛いと言われてはにかむ雪会さんを横目に俺は、言いながらギクッとした。それはあながち、ありえなくもないと思ったからだ。  世界史の教師は結城隆、若くて生徒にも人気があった。変な噂が立つような教師ではなかったが、雪会さんの得になることが二つも続けば、疑わしくもなってくる。 「やっぱり明日、言うわあたし」  雪会さんは俺に相談するだけで決心がついてしまったらしい。自己解決して鞄に答案を片付け始めた。 「待て」 「なあに?」 「行く時俺も付き合うから」  俺としては疑惑のある奴の元に雪会さんを一人で行かせるのは嫌だった。雪会さんはそれで、少し照れながら小さくうなずいた。 「うん、ありがとう史人君」  何で俺は雪会さんにはこうも親切になれるかな。時々自分に驚く事がある。常にこんな感じで問題を持ってこられたら、普通なら面倒になって投げ出さないか?  これが惚れた弱みってやつなのかな、こうやって頼られるのは、嫌な気はしない。
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