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水曜日の放課後。雪会さんは俺に『また明日ね』と言って、勉強道具を手に教室を出て行った。俺はどうも心配で帰れなくて、だけど落ち着かずにスマホで音楽を聴き苛々しながら待っていた。
小一時間程すると雪会さんは普通に戻ってきた。俺を見つけ、
「え、なんでいるの? あたしてっきり帰ったと思って」
と、すまなそうにする。
「いいの俺が勝手に残ってただけだから。終わった? 一緒帰ろ」
スマホをしまうと、雪会さんは更に申し訳なさそうに、上目遣いで俺を見た。
「ごめん史人君、先に帰っていいよ。先生がね、相談したいことあるって言うからあたしちょっと出掛けてくるから」
で、出掛ける?
「ケーキごちそうしてくれるんだって。相談料に」
ケーキを、おごる? それは、それって……。
「行くな」
今度は本気で止める。
「え、だって」
「おかしいって! 雪会さんあいつに狙われてんじゃねーの?」
「狙われるって何?」
「あの先生が雪会さんに手ェ出そうとしてんじゃないかって言ってんだよ」
「違うもん」
雪会さんはすねたように口を尖らせる。
「あたしみたいに勉強しない人の話、聞いてどうしたら勉強するか参考にするって言ってたよ」
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