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ミサイルの弾幕。空を覆う羽虫の大群のように、あらゆる角度からミサイルが迫ってくる。
それに臆すことなど微塵も無く、空を舞う蝶のようにヒラリヒラリと躱し、蜂のように目の前の敵を1機ずつ正確に迎撃していく。無駄な弾など使わず、時には自らを狙うミサイルを躱して同士討ちで撃墜する。
「あ……悪魔……まさか、空の悪魔が生きていたのか」
相手方の最後の1機のパイロットがそう呟いた。
コードネーム、リブ・ドゥ。彼女の正体は数年前の世界大戦で名をはせ、空の悪魔の異名を持つ将兵。しかし、史実では空の悪魔は大戦中に消息を絶ち、死亡したと噂されていた。そしてもう1つ、空の悪魔は男性である。
「ハッハー! 俺様を墜としたきゃ飛行連隊でも持ってくるんだなぁ!」
最後の1機を撃墜させると、リブ・ドゥは再び操縦席から立ち上がり、ヘルメットを取って、墜ちていく敵機に中指を立てながら高らかに叫んだ。
そのヘルメットの中は、中性的な顔立ちではあったが、骨格が女性のものとは違い、ゴツゴツしていて明らかに男性のもの。胸の膨らみも、つなぎでは分かりにくいが、立ち上がって正面から風を受けると、確かに無いように思える。
昨日までは、確実に女性だった。今朝、戦闘機に乗るときにはヘルメットをしていて素顔は晒していない。いつ、女性から男性になっていたのか。女と男、相反するもの。真逆とも考えられるそれは、彼のコードネームにも現れていた。
リブ・ドゥ
英語表記で“Lived“
生きる。生きた。生きていた。という意味だ。それをそっくりそのまま反転させると……
“Devil“
そう、デビル。悪魔……
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