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感心な子
「本当、最近じゃ『ありがとう』どころか、『いただきます』も『行ってきます』も言わないのよ」
「うちもそうよ。そのくせ、私への悪口だけは一丁前で、この前なんかソファに体操着を投げ捨てて、『洗っておいて、おばさん』って言ったのよ」
「ええ~! それはひどい」
「……」
「佐久間さんのところはどう? 娘さんの反抗期は少しは収まった?」
「ううん、全然! 悪くなる一方、私が言い返すと突然泣き出したりするから、もう本当にどうすればいいのか、全然わかんない」
「佐久間さんのところは大変だよね。旦那さんが単身赴任だから」
「たしかに。うちの娘は、私が注意しても完全にスルーしているけど、主人の言うことはまだ聞くし。『勉強しろ!』って怒鳴ると、渋々だけど勉強道具は出すのよね」
二人の同情を帯びた言葉に大して、佐久間早苗は大変そうな表情を浮かべながら相槌を返す。
このカフェでおしゃべりに興じるお母さん二人とは、子どもが幼稚園に通っていたときからの付き合い。かれこれ6年以上、ママ友関係が続いている。子どもの短所や成績、親子ゲンカの内容なども、互いにオープンにして話してきた。これまでは……。
バタンッ!
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