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__________ それより洗濯ものが……。
雨粒で覆われているバスの窓から、外の景色を見つめた。午後3時頃には家に帰りつく予定だったのだが、仲良しのお母さんたちとのおしゃべりが長引き、もう夕方の4時。今日は塾もピアノ教室もないので、沙耶は家にいる。しかし、あまり期待はできなかった。
今年の夏、同じように早苗が外出中に雨が降り出し、洗濯物を心配していた。しかし沙耶が家にいるし、雨はゲリラ豪雨とも言える激しい雨だったので、さすがに気づいて洗濯物を取り込んでくれているはず。そう思って帰宅したものの、
「なんで取り込んでないの!」
「えっ、だって、わかんなかったもん。雨降ってたの?」
「すごい土砂降りだったでしょ。雷も鳴って」
「私、音楽を聴いてたから」
そんな口論をしたのを今でも鮮明に憶えている。
___________ ぬれちゃったかな。
ネガティブ思考を引きずりながら、家に向かうと……。
「あれ?」
庭の物干し竿は雨でびしょぬれになっていたが、洗濯物は一つもない。
家の中に入ると、トイレから出て来た沙耶と出くわす。
「洗濯物、取り込んでくれたのね。ありがとう」
「別に」
ニコリともしないで2階に上がっていく。
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