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_______ 本当に、この子は。馬鹿じゃないの。
ドアの前に仁王立ちしている母親に気づき、慌ててベットから体を起こす。
「なんで、まだ着替えてもいないの! 帰って来てから何分経った?」
「ノックしてよ。前も言ったでしょ!」
「手洗いとうがいはしたの?」
「お母さんだってしてないじゃん。この前、スーパーから帰って来たとき、手を洗う前にお菓子食べてたくせに。わたし、知ってるんだからね」
________ まったく、口だけは達者なんだから。
「今、何時だかわかってる?」
「4時45分」
「もう50分になるでしょ! 家に帰って来て30分も経つのに服は着替えてない、ランドセルの中身も出してない。家に帰って来たら、まずは学校のプリントをテーブルの上に出しておきなさいって何度も言っているでしょ! そうやって忘れるから、提出物がいつもギリギリになるんじゃない。この前、ぞうきんが必要になったときだって、前の日の夜にいきなり3枚いるとか言ってきて。そんなタイミングで言われたって、すぐには準備できないんだからね」
「今日はプリントない。そんなにいつもあるわけないでしょ」
沙耶はランドセルを背中から降ろしたものの、右手はまだマンガをつかんだまま。
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