沙耶

2/10
前へ
/35ページ
次へ
涙が、止まらなかった。 デートに誘われて、嬉しかった。 それなのに、浮かれすぎて、バカだ、私。 ずっと好きだった。 好きなのに、それを今更素直になんて言えずに、だらだらと友達の延長線の関係だった。 怪我は悔しかったけど、あの時私の名前を呼んで駆けてきてくれたのも、すごく嬉しかった。 入院中も部活帰りに疲れているのに毎日、落ち込んだ私の気持ちを取り戻すまで、ずっと側に寄り添ってくれたのも。 なのに、あなたはもう、私には笑い掛けてくれないと言うの? 沙耶はその場にうずくまり、声を殺して泣き続けた。 その日から、彼は沙耶と目も合わせてくれなくなった。 もう遅いの? 昨日の怒った目が、頭から離れず沙耶の心臓を深く抉った。 今まで何を言ったってヘラヘラ笑うだけで、そんなに怒った彼の顔を見たのは初めてのことだったから……。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

150人が本棚に入れています
本棚に追加