沙耶

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彼のために、と勝負の神様で有名な神社までわざわざ電車を乗り継ぎ御守りを買ったまでは良かったが、未だに渡すこともできずに、それは鞄の奥に肩身狭そうに入ったままだった。 本当は、笑顔で「私の分も、頑張ってね」何て言いながら手渡ししたかったが、もうそんなノリで話し掛けることなど、出来なかった。 今までどんな風に話し掛けていたかも分からなくなり、今更気軽に話し掛ける勇気なんてものは湧き出ることもなく、結局大会前日の帰りに、人知れずこっそりと、彼の下駄箱に入れただけだった。 名前も、手紙も、添えることもなく……。
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