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ダーーーーーン
何かが床に強く打ち付けられる音が体育館に響き渡り、辺りは一瞬にして静まり返った。
一瞬の静けさを破るように、女子達の怯えが混じった声がこだまする。
「沙耶?沙耶、大丈夫?」
「沙耶、どうしたの?」
口々に心配する声がその人の名を連呼していたのを聞き、光弘の目に緊張が走った。
と、同時に体はもう、沙耶の元へと駆け出して行った。
「おい、沙耶?大丈夫か?」
うずくまり、いつまでも立ち上がらない彼女の手をどかして膝を見ようとした。
「痛いっっ!」
途端に彼女の悲鳴混じりの声が響いて、光弘は激しく動揺した。
何もできず立ち竦むだけの彼の背後に、素早く伸びてきた腕。
「どけ!」
強い力で肩を引かれて光弘は後ろに倒れ込んだ。
女子の監督が彼女を軽々と抱き抱えると、副キャプテンを呼んで何か指示を伝え、二人はあっという間に廊下へと消えていった。
それ以上、何も出来ない自分に苛立ったのは後にも、これ以外無かった。
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