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「沙耶!」
学校帰り、彼女の後ろ姿を見つけて追い掛ける。
今日は昨日から始まったテスト週間のお陰で部活は休みで、久し振りに既に引退した彼女と帰りが一緒になれた。
「かばん、持とうか?」
彼女の背中で重たそうにバックパックが揺れる。
不馴れな松葉杖に苦戦しながら歩く沙耶に並ぶと光弘は速度を急減速した。
「大丈夫。これくらい、平気」
そう答える沙耶に笑顔は全く見られなかった。
あの、ムードメーカーだった沙耶は、あれ以来本心から笑うことが全く無くなった。
「もうすぐ、代表決定戦だね」
独り言のように呟く言葉が、集中して聞いていないと聞き漏れてしまいそうな程か細い。
「ああ。このテスト終わったら、もう休みなしだよ」
「良いなー、羨ましい」
その声に涙が混じっていたのに気が付いた。
なにも発せず、光弘はただ静かに、沙耶を見詰めた。
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