光弘

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引退してから伸ばし始めた彼女の髪は次第に女らしさを強調していった。 今までは、下ネタだって言い合えたのに、今はそれが言えない。 東京都代表決定戦の二週間前、彼女が隣のクラスの奴に告白されたと人づてに聞いた。 しかも、彼女には別に好きな奴がいるから、とあっさり断られたと、どこから聞いてきたのか、得意そうに隣の席の奴が付け加えた。 何だよそれ。 せっかく好きって気付いたのに、もう振られてやんの、バカみたい、俺。 そう思うと、だんだん腹が立ってきた。 あれだけ心配してやったのに、好きな人? 彼女が一人先に大人になってしまいそうで、それは自分勝手の単なる我が儘に放った言葉だった。 「ご褒美、考えた。俺、女の子とデートしたい。お前で良いから、デートして」 少しずつ笑顔が戻ってきた今だからこそ、そんな我が儘も許されるかもしれない。 意を決して言った言葉の答えは、痛みを伴った。
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