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春休みの昼日中、柔道部員の面々は運動場で精を出している同輩達を見物していた。
本来なら真面目に部活動に取り組んでいるが、口うるさい顧問が新学期の準備に追われ部活動に顔を出さないこの時期に限りサボり放題で最上級生の二年生達はすでに帰路に。
俺たち一年も同様に帰るとさすがにマズイので活動時間内は柔道場に留まっているのだが、する事もないので(練習?なに言ってるの?)他の運動部のご活躍を拝見しているのだ。
ちょうど柔道場の真正面の運動場ではソフトボール部が活動中で、彼女達の練習風景を見るのが日課となっている。
「桜井っていいなあ」
隣で寝そべっている村下の呟きに部員一同振り向く。
思春期真っ只中の野郎達が異性の姿を何日も眺めていると、そのような感想が漏れたって不思議なことではない。
実際口には出さなくとも白球を追いかける女子の中にお気に入りを見つけ、中には妄想の中で恋愛関係にまで発展している輩もいるはず。
好きになるのは結構なのだが、問題なのは口にした男、村下。
こいつが問題なのだ。
村下とはクラスも同じで出席番号や背丈も近いことから一年間行動を供にしていたので、だいたいの行動パターンはわかる。
村下は惚れやすい。
そしてその事をすぐ口にする。
「〇〇は可愛い」だの「〇〇の笑顔がいい」だの聞いてもいないのに宣言し、対象となった異性の魅力を熱く語りだす。
これ自体は別に構わないが、村下の特筆すべきなのは彼女についての情報を知らない間に仕入れており、それすら包み隠さず我々に分け与えてくれる。
これが毎日続くと聞き役に徹しているだけの俺たちにも不思議な熱量が伝染していき、知らないうちに気にもしていなかった彼女の事の考えるに至るのだ。
そして村下は突如として話さなくなる。
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